Diary
思い出に「かたち」があるとすれば、それはきっと。|151画のPhoto album
みなさんは写真を撮るのは好きですか? 僕はかなり好きで、どこへ行くときもカメラを持ち歩くようにしています。
何気ない瞬間も、写真に残せばずっと忘れられずにいられます。
はじめまして。日用品愛好家の渡辺平日です。ふだんは日用雑貨を研究しつつ、それにまつわるエッセーを雑誌やWebメディアに寄稿しています。簡単に言えばライターに近い仕事になるでしょうか。
僕は文章を書くことを生業にしていますが、日記をしたためるのは苦手で……。長く続けている人をみると「すごいな」などと感心してしまいます。
そんな自分にとって写真は、日記のような存在といえそうです。写真を見るだけで、その日の天気や風の匂い、交わした会話、流れていた音楽。そういう物事をすぐに思い出すことができます。
「平日さん、151画(いちごいちえ)のプロダクトをレビューしてくれませんか?」
ある日、個人的な友人でもある151画の木島さんからこんな依頼が寄せられました。なんでも、写真に関するアイテムを開発していて、完成したらぜひ使ってほしいとのこと。
文房具メーカーがだったらよくある話だけど、写真家たちがデザインするのってあまり聞かないし、なんだかおもしろそう。
関東圏を中心に活動する151画。「日常の感じ方を変えるために、光を形にしていく。」をコンセプトに、かけがえのない日常の一瞬と向き合っています。
「作り手の矜持を感じるものだけを取り上げる」。これが僕の基本方針で、仕事を引き受けるまえに、そのあたりをきちんと確認しています(たとえクライアントが友人であってもそれは変わりません)。
本来であれば実際に会って話を聞くべきですが、いまの状況ではなかなか難しく……。そこで今回は、Zoomを利用してこだわりについて詳しく伺うことにしました。
いろいろと説明を受けたなかで、僕が特に興味を持ったのがPhoto albumというプロダクト。
その名のとおり写真用のアルバムで、一見、ごくふつうのアイテムに見えると思います。いったいどんなところがおもしろいか? それは後で詳しく説明するといたしましょう。
表紙にはロンニックを使用。高級なファイルや手帳などに用いられる素材で、優れた審美性と耐久性を兼ね備えています。芯材には丈夫な黄ボールを採用し、さらに耐久性を高めました。
ポケットが縦に連なっているのが最大の特徴(これが「オリジナリティー」の源泉です)。ポケットは24個あり、それぞれ写真を2枚ずつ入れることができます。
白と黒のコントラストが目をひきます。なお、この境目部分は、写真を一時保管するためのポケットにもなります。
ゴムバンドでしっかりと固定可能。持ち運ぶときも安心ですね。
このアルバムはすこし変わった構造を採用しています。これはおそらくですが「時間の流れ」を意識しているのではないでしょうか(僕ははじめ、日めくりカレンダーを連想しました)。
僕の推察はさておき。アルバムを見たとき、「一年の間に撮った写真を順番に並べると良さそうだな」と感じました。そこで今回は、2020年に撮影した写真を30枚ほど用意。それらを時系列で並べることにしました。
専用の袋に収納された状態で自宅に到着。なんだかワクワクします。
写真の上には151画のコンセプトが書かれた薄紙が。「何気ない一日が、宝物」。……今年はまさに、この言葉を噛みしめるような一年になりましたね。※ボックスは別売りのアイテムです
今回は写真の現像も151画にお任せすることに。それにしても、現像を頼むのってずいぶん久しぶりです。下手をすれば中学生時代以来になるかもしれません。
むかしはデジタルカメラなんて便利なものはなくて。いや、厳密に言うとありましたが、とても高価で気軽に買えるものではなかったですね。
当時の僕らにとって、カメラといえば「写ルンです」一択でした。修学旅行の初日に撮りすぎて、途中で買い足すはめになったのはいい思い出です。そうそう。家に帰ったあと、カメラを写真屋さんに持っていって現像してもらうのがすごく楽しかったなあ。いまになって思うと、あれも含めて旅行だったような気もします。
1枚目には帰省時に撮った地元の海の写真をセレクト。
あっ、これは正月に海辺で遊んだときの写真だ。みんな元気にやってるかな?
思い出をゆっくりと振り返りながらアルバムを重くしていきます。
「層状に積み重ねていくアルバムか。ちょっと目新しいな」。最初に説明を聞いたとき、僕はこう思いました。包み隠さずに告白すると、その構造に惹かれたというよりは、プロダクト自体の美しさに魅力を感じ、レビューを引き受けたのです。
ただ、実際に写真を入れていくと、これが想像以上におもしろく……。最終的には「ああでもない、こうでもない」とすっかり熱中してしまいました。
「ページをめくるたびに時間が進んでいく」
どんなアルバムでも時系列順に並べればそうなります。ただ、このアイテムは構造上、「時間の流れ」をより強く感じられるんですよね。写真を一度に眺めたり比較したりするのには不向きですが、今回の使い方にはばっちりハマったようです。
今回は半年間を切り取りましたが、もっと短い時間や、逆に、もっと長い時間を捉えるのもいいアイデアだと思います。
たとえば前者の場合。1枚目は真顔の写真、それをめくれば笑顔の写真――という形式を繰り返せば、コンセプチュアルな写真集のようになりそうです。
後者の場合だと、家族やパートナーと定期的に写真を撮影するのもおもしろそう。半年に一回のペースで撮るとしたら、24年間分の記録を収めることができます。たぶん、ポケットがいっぱいになるころには、このアルバムはかけがえのない宝物になっていることでしょう。
今回は2/3を埋めました。残りはまた年末に……。それにしても、偶然に生まれたグラデーションが実に美しいですね。無作為の美を感じさせます。
それにしても、写真が重なることでカラフルな「層」ができるのがおもしろいですね。なんというか、思い出が可視化されたようで不思議な感じがします。思い出に「かたち」があるとすれば、それはきっと、こんなかたちをしているのではないでしょうか?
Photo album
素材 :ロンニック(表紙)/ NTラシャ(見返し)/ 黄ボール(芯材)
仕様 :24ポケット / はがきサイズの写真を48枚収納可能
備考 :シールラベルが1枚付属します
日用品愛好家。海の見える小さな町で生まれ育ちました。毎日が平日のつもりで、日夜せっせと文章を書いています。趣味は町歩きと物件探しと民話収集。そういう話題が耳に入ると、反応して振り返ります。主な寄稿先は『LaLa Begin』『北欧、暮らしの道具店』『goodroom journal』など。