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【特別企画】1時間かけて今という一瞬を残す、ガラスの写真

日常の中で “今って、いいね” と思えるきっかけづくりをしている「151画」と湿板写真家「三枝 直路」とのコラボレーション企画を行いました。湿板写真とは、ガラス板に溶液を用いて像を写す150年以上前の技法です。必ず成功するわけではない繊細な工程のなか、ご参加いただいた皆様と一緒に、湿板写真を通して今という時間について考え、感じ、見つめなおすことができた一日となりました。
湿板写真はガラスの板にコロジオンという薬品を塗り、硝酸銀溶液に浸して感光材料としています。コロジオンは水絆創膏といしてよく知られている薬品です。

三枝さんが慎重に作業を進行しています。たくさんの薬品に囲まれている様子はなんだか科学の実験みたいで、大人でもわくわくしてしまいますよね。

ガラスの板は撮影前に丁寧に表面を磨きあげます。この作業は綺麗に像を残すためにとても大切な作業です。一枚一枚慎重に作業を行いますが、たった一枚の写真がこのガラス板に映し出されると思うとすでにこのガラス板に愛着が湧いてきます。

作業工程を見守る151画 / 江守の様子

硝酸銀溶液から取り出したガラスの板は感光性を持っているので、暗室の中で作業を行います。イベント用に特別製作したフィルムホルダーに入れてから撮影に臨みます。

ガラスの板に像を写す工程、いわゆる撮影はやり直しができないという工程に緊張が走る瞬間です。どんなポーズをしようか、自分自身がどう写りたいのか、そんな事を考えているとたくさんの情報や写真が溢れかえった今、一枚の写真を撮るという行為に意識を集中させる事はとても新鮮な時間になります。

作業を補佐する151画 / 江守と木島の様子

像を定着させる作業は暗室外で行う事ができます。ご参加いただいた皆様にも見てもらう事ができました。
参加者の皆様に説明をしながら作業を進行する三枝さん

像がゆっくりと浮き上がってくる様子は感動です。

まとめ
湿板写真は、150年以上前の撮影技法ですが当時撮影された写真は今現在もほぼそのままの状態で残されています。1枚の写真を撮影するために、40分ほどの時間がかかり、多数の複雑な行程が存在するため、とても特殊で手間がかります。いつでも気軽に写真を残せる現代ではありますが、そんな今だからこそ、こうして撮影するという行為に意識を向け写真を残すということが今という時間を再認識するきっかけになるのではないかと考えています。

江守 勇人 / 木島 夕貴

151画フォトグラファー兼ライターの二人組。プロフェッショナルとして写真や日常というキーワードと日々向き合い、様々なことに見つめ直しています