Diary

ザ・リッツ・カールトン:四方啓暉様から学ぶ従業員満足度

働いている方々が仕事を誇りに思えるサービスを提供している151画が、ザ・リッツ・カールトン大阪設立の責任者として携わられ、97年の開業からは副総支配人として従業員の先頭を歩まれていた四方さまに従業員満足度についてインタビューをさせていただきました。従業員満足なくしてお客様の感動は得られないと力強くお話ししてくださった四方様のお言葉には、従業員満足を向上させるための沢山のヒントがありました。151画の視点でお聞きすることができたお話しをご紹介いたします。

【四方様について】
四方啓暉
Shikata Yoshiaki
大手前大学 現代社会学部 客員教授
ザ・リッツ・カールトン大阪 元副総支配人
著作:リッツ・カールトンの究極のホスピタリティ(河出書房新社)151画の木島がお話しを伺いました

木島:
ザ・リッツカールトン(以下リッツ)ではなぜ素晴らしいホスピタリティが発揮できるのか教えていただけますでしょうか?

四方様:
リッツで働く人たちがお客様に喜んでいただくためにどうしたらいいかと常々考えるわけですけども、その常々考える体型である、ということが大切だと考えています。私たちがマネジメントする上で気をつけているのは、スタッフにやる気を起こさせ、それを継続できることができれば、必ずお客様満足につながるということです。リッツでは定期的に従業員への満足度調査を行っているわけですが、いつも出てくるキーワードとして “自分が今「信頼」をされているかどうか”。そして “自分がここで仕事することによって成長できるかどうか ”。この二つの言葉にまとまると思います。そのため、とくにマネジメントするものたちは従業員の成長・信頼を職場に溢れるようにマネジメントを心がけるようにしています。

木島:
信頼と成長についてもお聞きしたいです。具体的に信頼はどのように築いているのでしょうか?

四方:
信頼というのは、要は相手を信じて相手にまかせるということ。大事なことは任せたあと結果がでるわけですけど、必ず報告を受けて結果に対して向き合ってコメントをしてあげることが、持続させるために非常に大事なことだと認識しています。ホテルで仕事をしていると社員の方、パートの方、アルバイトの方、業務委託の方など様々な方がおられますけども、皆さん立派な大人で社会人として生活をされているわけですから、そう言った点では信じるに足りる方々というのが前提ですね。知識や技術として足りないものがあればサポートします。そしてその結果を聞いて、それに対してできるコメントは必ずすることの繰り返しを徹底しています。

木島:
具体的にESにポイントを置いた調査以外の施策や制度はありますか?

四方:
ひとつ具体的な施策と言いますと、ある部署が仕事をしていく上で応援が欲しいときがあります。そうするといろんな職場に声をかけて募集を行うんですね。そうしますと他の部署の方が応援に駆けつけてくれます。結果、おかげさまでうまくいく。そして、終わった時に応援してもらった人がありがとうと声をかけるわけです。まぁ、ありがとうと言われた者は一般的にはそれで終わりますよね。

しかしリッツでは、その後応援された方は、応援してくれた人たちにお礼のカードをお返しします。人によってはイラストを描いたりして感謝を伝えます。そしてそのカードはコピーをとって全職場に配られるんでね。それにより、あの人たちが手伝ってくれたのだと皆がわかるわけです。もちろん現物は応援してくれた人の手元に届きます。それをもらった人たちは、少し控えめながらもカードを受け取り、カードは自分の職場やロッカーにピンで留めている方もいたり、家に持ち帰ってご家族にお見せになったりするんです。お子様がお父さんかっこいいとか奥さんがお父さん頑張ってるんだねって働きぶりが周りにも伝わります。それに近いものとしてお客様からお礼のお手紙をいただくことがありますが、スタッフが口を揃えていうのは「お客様からもらうお手紙はすごくうれしい。けどそれ以上に仲間からもらった手紙のほうがもっと嬉しい!」と。やっぱりそれだけ仲間に認められるということが働くものとして誇りになるしやる気にもつながるのですね。たかだかハガキくらいの大きさだけど、そういったものでやる気を起こすことができるわけですからとても大事なツールのひとつになります。

木島:
お客様に直接触れ合うことがないスタッフの皆さまに関してはどのように考えられているのですか?

四方:
お客様と接することがない縁の下の力持ちといわれるスタッフの方たちももちろんいて、そういった人たちに対しても仲間たち自身が補ってくれています。年に一度それぞれの職場で誰が一番輝いていたかというのが選ばれてパーティーでお祝いをするのですが、どんな人が選ばれるかというと社員食堂の人が選ばれたりもするんです。直接お客様の目に触れることはないですが、縁の下でなくてはならないお仕事をされている人たちが年末のオブザイヤーで選ばれることがあるのはとても嬉しいことですね。スタッフからみて社員食堂の調理人はお金を落とすお客様ではないけれどあたかもお客様のように、友人のように、ホテルの中でも接しようとする。働くもの同士も友人や家族のように思えば内部のお客様も大切にしようと思うわけですね。木島:
スタッフの皆さまの働きがいは信頼成長を感じられることだとお話しをしてくださいました。さらに幸せや幸福感といういうのはどういった部分に感じられますか?

四方:
ホテルの中で仕事を感じる幸福感というのは、ホテルを出て地域への貢献社会活動を行ったりもするので、老人ホームや幼稚園に行ったりとか。そういったことを大事にできているときは幸福感を感じられます。さすがアメリカ的な会社だとおもうのはその度にTシャツを作ったりする。そういったのも楽しいですね(笑)木島:
リーダーについてのあり方や理想はありますか?

四方:
やはり、社員にやる気を起こさせる力をもっているか、リッツの想いやフィロソフィーをいかにわかりやすく語ることができるかどうかがリーダーで大切な要素になります。リーダーが職場のスタッフを満足させることができているかどうかも重要。それをリーダーができていないとしてもダメなのではなくて、今度は我々がリーダーを育てる。そういった意味でも従業員満足度調査が必要になりますね。木島:
私たちは普段、会社様やご家族などの日常風景を撮影させていただいているのですが、皆さまにとって日常というワードを聞くとどんなことを思い起こしますか?

四方:
リッツではまさに「我が家のように」というコンセプトがあります。さりげない日常ということでたまにお伝えする忘れられないストーリーがあります。大阪のリッツの場合、一階に暖炉があるんですね。その暖炉は本物なので薪を燃やして使います。ある日若いお父さんと小学生低学年の男の子がその暖炉を見ながら話しをしているんです。何を話しているのかと思ったら、火の扱いの話していました。まるでキャンプファイヤーみたいに教えてるわけですよ。それは本当の薪だからできるわけですね。火が燃えているパチパチという音や木が燃える匂いとか。まるでノーマン・ロックウェルの絵を見るような。何気ない日常になりえる空間になっているということ。男の子にとっては忘れることができない時間になっていると信じている。そういう場をホテルが提供できているということが嬉しいですね。スタッフに関しては、通勤の中で新しいお店ができたらそこを調べに行ったりしますね。何故かというと、お客様に紹介したいからなんですよ。仕事を離れてもお客様にできることがないか考えることがスタッフの日常です。ホテルマンの習性ですね。プライベートも仕事につながってしまうことを苦にならないんです。

まとめ
リッツでの従業員満足を満たすために大切なワードは「信頼」そして「成長」。スタッフの皆さま全員の立場や役割という垣根をこえてファミリーのような関係性が気づかれているのですね。またスタッフの皆さまにとって日常とは特定の動作やルーティーンが日常という捉え方ではなくライフスタイル、さらには人生そのものであるという感覚ということが分かりました。ホテルの中で行われている業務もルーティーンが多いという印象を受けますが、そういったことには縛られず、プライベートも仕事につながってしまうようなマインドからも従業員満足度の高さを感じることができまxす。