Diary
人はなぜ写真を残すのだろう?|151画のPhoto folder
こんにちは、日用品愛好家の渡辺平日です。このミニ連載では151画(いちごいちえ)のオリジナルプロダクトを紹介しています。
前回はPhoto albumというアイテムを取り上げました。これが実におもしろいアルバムで……はやく地元にいる家族や友人たちに見せてあげたいです。
関東圏を中心に活動する151画。「日常の感じ方を変えるために、光を形にしていく。」をコンセプトに、かけがえのない日常の一瞬と向き合っています。
家族といえば、どうも今年の夏は実家に帰れそうにありません。こういう状況だし、残念ですが諦めるしかなさそうです。
巷では「オンライン帰省」なるものが流行していると聞きました。なかなかおもしろそうですが、両親は機械に疎いし、僕もビデオ通話が苦手なので、別の方法を考えたいところです。なにか、「まあまあ大変だけどなんとか元気でやってるよ」と伝えられる手段はないものでしょうか。
……そのとき、ふと、いいアイデアが浮かびました。そうだ。あのアイテムで、両親に写真をプレゼントするのはどうだろう。
「あのアイテム」とは151画のPhoto folderのこと。大切な人に写真を贈るために作られた、シンプルで美しいフォルダーです。
開くと長方形に切り抜かれたくぼみが。ここに写真を入れて保管します。
素材には極厚のボール紙を採用。その色味もあいまって、どこか石版のようにも見えます。
正直なところ、はじめて見たときは「自分のためのアイテムではないな」と感じました。重要なイベントがあるなら別ですが、僕は日常の風景しか撮ってないので、使う機会はなさそうだなと考えたわけです。
ただ、いまのような状況ではどうでしょう。なんでもない「日常の風景」を共有するのって、とっても価値があるように僕は思います。そうと決まれば……。善は急げと言いますし、どれを贈るか選ぶとしましょう。
これは冬に友人とテーマパークに行ったときのやつだ。あのころはこんなことになるとは思わなかったな……。※プライバシーに配慮し、焦点をずらしています
あっ、近所の写真とかいいかも……。うーん、迷うな。
こういうのが好きだけど、ちょっとハイコンテクストすぎかな?
さんざん悩んで、仕事机を写した一枚を贈ることにしました。「ここで頑張っているんだな」と、遠い場所にいる僕へ、想いを馳せてくれたらいいなと考えています。
……それにつけても、写真を手に取りながら思い出をふり返るのって、こんなに素敵なことだったんですね。すっかり忘れていました。また折に触れて現像をお願いしたいです。
一瞬で数百枚分のデータをやりとりできる時代に、人はなぜ写真を残すのか。このフォルダーのおかげで、その理由を思い出せました。
アルバムをみかえしているとき、あることに気がつきました。
これは2月のはじめに友人と遊んだときの一枚です。このあたりを境に、世の中の空気がガラッと変わったと記憶しています(ときおり、まるで違う世界に迷い込んだような気持ちになります)。
こじつけかもですが、この「扉」の写真は、なにかを示唆しているように思えてなりません。
その日以降、僕の写真からは人が消えました。
会うのを控えていたのであたりまえですが、こうやって時系列で見ていくと、「日常」というものがひどく遠いものに感じられます。……受け入れてきたつもりでしたが、だんだんと、悔しさに似た感情が生まれてきました。
ほんとうの気持ちを言うと、僕は日常を諦めたくないです。でも、いまは諦めるしかありません。だから僕は、ささやかな抵抗として、写真を撮り続けようと思います。なんでもない喜びや幸せを確かめるように。
Photo Folder
サイズ:257mm ×190mm
素材 :ボード紙
仕様 :L判〜2L判対応 / 5枚程度まで収納
備考 :シールラベルが1枚付属します
日用品愛好家。海の見える小さな町で生まれ育ちました。毎日が平日のつもりで、日夜せっせと文章を書いています。趣味は町歩きと物件探しと民話収集。そういう話題が耳に入ると、反応して振り返ります。主な寄稿先は『LaLa Begin』『北欧、暮らしの道具店』『goodroom journal』など。